コンピューターの冷却システムにおけるサーマルペーストの重要性は、特に空冷の場合に見落とされがちです。この記事では、空冷にサーマルペーストが必要な理由、使用しない場合の影響、交換頻度について解説します。また、適切なサーマルペーストが手に入らない場合の代替品についても紹介します。

空冷にサーマルペーストは必要ですか?

結論から言うと、ファン冷却にもサーマルペーストは必須です。コンピューターを安定して動作させるために、以下のような重要な役割を果たしています。

熱伝導

サーマルペーストがないと、プロセッサーから発生する熱がヒートシンクに効率よく伝わりません。サーマルペーストはCPUとヒートシンクの間にある微細な隙間を埋め、両面の接触を最大化します。一見滑らかに見える表面でも、微小な凹凸があり、そこに空気が入り込むと断熱材として働き、熱の伝達を妨げてしまいます。サーマルペーストは熱伝導性の高い材料でできており、これらの隙間を埋めることで、CPUからヒートシンクへの熱伝達を大幅に改善します。

放熱

熱がヒートシンクに効率よく伝わらなければ、ファンがその熱を効率的に放散することもできません。CPUとヒートシンクの間にサーマルペーストの層があると、熱がヒートシンクの表面全体に均等に広がり、ファンがより効果的に冷却できるようになります。これによってCPUや他のパーツの温度が低く保たれ、サーマルスロットリングのリスクが減り、パソコンの寿命も延びます。

過熱の防止

パソコンが高温になりすぎると、パフォーマンスの低下、システムクラッシュ、さらにはパーツの永久的な損傷など、さまざまな問題が発生します。過熱するとCPUが自己保護のために動作速度を落とし、システムが重く反応しなくなることもあります。サーマルペーストを適切に塗布することで、効率的な熱伝導と放熱が可能になり、これらの問題を防ぐことができます。

サーマルペーストの重要性を実証するため、デスクトップPCで使用時と未使用時の比較テストを行いました。テスト環境はIntel Core i3-10105F CPU、Asus H510M-Eマザーボード、空冷Golden Fieldクーラー、ADATA 8Gメモリです。AIDA 64でCPUに負荷をかけ、HWinfoでCPUパッケージ温度を監視しました。結果はサーマルペーストなしでは93.6℃に達したのに対し、Kooling Monster KOLD-01を5点塗りで適用した場合は77.5℃に抑えられ、16℃もの差が出ました。この温度差はPCのパフォーマンスと安定性に大きく影響するため、空冷システムにサーマルペーストは必要不可欠と言えます。

サーマルペーストなしでもゲームはできますか?

技術的にはサーマルペーストなしでもゲームはプレイ可能ですが、ゲーム体験を大切にするなら絶対に避けるべきです。サーマルペーストなしでゲーミングシステムを動作させると、CPUやGPUから発生する熱を効率よく放散できず、パフォーマンスが著しく低下します。熱管理が効かないとフレームレート(fps)が下がり、スタッタリングやラグが発生して、ゲーム体験が台無しになります。

サーマルペーストがゲーム性能に与える影響を実証するため、3年使用したAcer Nitro 4 AN515-54ノートPCでテストを行いました。このノートPCはIntel Core i5 CPU、NVIDIA GeForce GTX 1660 Ti(6GB)GPU、Samsung 16GB DDR4メモリ、CFL Octavia_CFSマザーボードを搭載しています。Elden Ringをプレイしながら、HWinfoで5分間の平均fpsを監視し、戦闘中の高負荷シーンを中心に計測しました。

結果は、サーマルペーストの有無で明確な差が出ました。サーマルペーストなしの状態では平均8fpsしか出ませんでしたが、Kooling Monster KOLD-01を5点塗りで適用した場合は平均41fpsに達しました。これはサーマルペースト使用時に412%ものfps向上を示しています。

これらの結果は、サーマルペーストがゲーム性能に与える大きな影響を示しています。サーマルペーストの塗布を省くと、低フレームレートや過熱リスクによってゲーム体験が大きく損なわれ、パーツの永久損傷を招く可能性もあります。ゲーム体験とシステムの長寿命を重視するなら、最適な熱管理とパフォーマンスを確保するためにサーマルペーストは欠かせません。(詳しくはゲーミングPCをサーマルペーストなしで使っても大丈夫?をご覧ください。)

サーマルペーストはどのくらいの頻度で交換すべきですか?

サーマルペーストの理想的な交換頻度は一概には決められません。PCの使用用途、サーマルペーストの品質、パーツの種類など、さまざまな要因に左右されるためです。低品質なサーマルペーストと重いゲームや動画編集などの高負荷な使い方では、数か月ごとの交換が必要になることもあります。一方で、高品質のサーマルペーストと、ウェブ閲覧や文書編集のような軽い使い方であれば、数年に一度の交換で済む場合もあります。(詳しくはサーマルペーストはどのくらいの頻度で交換すべき?をご覧ください。)

あらかじめ決められた期間だけに頼るのではなく、CPU温度、システム性能、サーマルペーストの見た目を観察して交換時期を判断するほうが効果的です。サーマルペーストのひび割れ、乾燥、硬化、オイルの分離や滴りなどが見られる場合は交換のサインです。こうした状態では熱伝達が十分に行われていないため、交換することでシステム全体のパフォーマンスが改善します。

もう一つ注目すべきなのが、CPUのアイドル時温度です。通常、60〜80℃の範囲の異常に高いアイドル温度は、サーマルペーストが最適に機能しておらず交換が必要なサインです。CPU温度とシステム性能を定期的にチェックし、サーマルペーストの物理的状態を観察することで、システムを涼しく効率的に保ち、寿命を最大限に伸ばし、過熱によるパーツ損傷のリスクを最小限に抑えられます。(詳しくはCPU温度のチェック方法とその重要性をご覧ください。)

サーマルペーストの代替品には何がある?

CPUとヒートシンク間の最適な熱伝導には、サーマルペーストが最も一般的で効果的な解決策です。しかし、適切なサーマルペーストが手に入らない場合もあります。そのような時は、代替品がいくつかありますが、熱伝導性能は劣るため、正規のサーマルペーストが手に入るまでの一時的な使用にとどめることが重要です。

サーマルパッド

サーマルパッドは固体状のパッド型素材で、サーマルペーストの代わりに使用できますが、熱伝導性能は劣ります。通常はシリコン系素材にセラミックや金属粒子などの熱伝導性フィラーを混ぜて作られており、熱伝導性を高めています。サーマルパッドは複数の矩形サイズで販売されているため、適切なサイズを見つけるのが手間になる場合があります。ただし、塗り広げる必要も追加工具も不要で、CPUとヒートシンクの間に直接挟むだけで済むため、簡単で汚れない作業が可能です。

サーマルジェル

サーマルジェルは粘度のあるグリース状の流体で、サーマルペーストと同様にパーツ間の微細な気泡を埋めることができます。しかし、空気に触れるとすぐに固まってしまうため、CPUやヒートシンクに均一に塗るのも取り除くのも難しくなります。このため、熱伝達材料を均等で効果的な層に仕上げるのが難しく、サーマルペーストほどの性能は期待できません。また、サーマルジェルはサーマルペーストやパッドほど広く流通していないため、代替品としての人気は低めです。

こうした代替品は、正規のサーマルペーストが手に入らないときだけ使うべきものであり、同等の熱伝導効率は期待できません。可能な限り、最適な冷却性能とCPUや他のパーツの長寿命化のために、高品質のサーマルペーストを使うことが最善です。(詳しくはサーマルペーストの代替品にはどんなものがある?をご覧ください。)

まとめ

結論として、サーマルペーストはPCの空冷システムに欠かせない要素です。効率的な熱伝導と放熱を実現し、特にゲーム中の過熱を防ぎ、最適なパフォーマンスを維持します。サーマルペーストの状態を定期的に確認し、必要に応じて交換することがPCを快適に動作させるために重要です。代替品もありますが、熱管理の性能は劣るため、正規のサーマルペーストが入手できない場合の一時的な使用にとどめるべきです。

FAQ

サーマルペーストなしで動かしても大丈夫ですか?

いいえ、サーマルペーストなしで動かすと、過熱、性能低下、ハードウェア損傷の原因になります。サーマルペーストはCPUとヒートシンク間の効率的な熱伝達を保証します。

サーマルペーストなしでCPUを冷却できますか?

推奨しません。サーマルペーストはCPUとヒートシンク間の効率的な熱伝達に不可欠です。なしでは冷却性能が低下し、過熱が発生する可能性があります。

サーマルペーストは空気に触れると劣化しますか?

はい、長時間空気に触れるとサーマルペーストは乾燥して効果を失います。使用後は必ずキャップを閉めて、涼しく乾燥した場所で保管してください。

CPUクーラーをサーマルペーストなしで使うとどうなりますか?

熱伝達が非効率になり、過熱、性能低下、ハードウェア損傷につながる可能性があります。CPUクーラーを取り付ける際は必ずサーマルペーストを塗布してください。

水冷でもサーマルペーストは必要ですか?

はい、水冷の場合でもCPUと水冷クーラーのコールドプレート間の効率的な熱伝達のために、サーマルペーストは必要です。